走行性能

NISMOのロードカーはベースとなる車両の基本性能を活かし、そのパフォーマンスをさらに進化させることをターゲットとして開発されている。NISMOはテストコースで「匠」と称される最高ランクの開発ドライバーから得られる感覚的な評価を重視して、数値の先にある感性の領域を何よりも大切にしているのである。テストコースの走行実験で、エンジニアと開発ドライバーが切磋琢磨しながら徹底した解析を行い、そこで得られたデータから開発の核となる数値を抽出し、それをもとにベース車に対するチューニングをさらに精緻化することで、NISMOロードカーは磨き上げられる。開発ドライバーの鋭敏な感覚によって仕上げられたNISMOロードカーは、より速く、気持ち良く、また、高速域でも安心してドライブが愉しめるようにチューニングされているのである。

■NISMOの最先端でのレース活動のノウハウを結集し、VR型3.0L V6ツインターボ エンジンを専用チューニング。

VR30DDTTエンジンは小径のタービンとコンプレッサーを採用したターボチャージャーの搭載をはじめ、吸気側に採用した電動VTCシステム（可変動弁システム）、燃料噴射制御を高い精度で行う筒内直接燃料噴射、ピストンとの摩擦抵抗を低減し回転フィールをスムースにする鏡面仕上げのシリンダーブロック、つねに安定した冷却効果をもたらす水冷式インタークーラーなど、先進の高性能ターボエンジンにふさわしいテクノロジーを結集したハイパフォーマンスユニットである。このVR30DDTTエンジンにNISMOの長年のレース活動で得たノウハウを注入し、専用エンジンチューニングを実施。実際にGT500用エンジン開発に携わった開発者が同じ実験設備を使用してチューニングを施し、最高出力を298kW（405PS）から309kW（420PS）に向上。最大トルクも475N・m（48.4kgf・m）から550N・m（56.1kgf・m）へと大幅に向上している。アクセルを踏み込んだ際の力強い加速。そして、長く持続する加速力など、VR30DDTTエンジンのポテンシャルを最大限に引き出した走りが愉しめる。また、ドライバーが日常のドライブでも“速さ・愉しさ”を体感できるよう“気持ち良い加速”を追求。開発ドライバーによる、徹底的な走り込みにより感性面で加速フィールの磨き上げを行なった。たとえば、高速登坂路における追い越し加速。圧倒的なエンジンのトルクにより、通常ではシフトダウンしたくなる状況でも5速ホールドのままアクセルを踏み込むだけで、リニアで力強い加速力を発揮。安心感の高い余裕ある追い越しを可能としている。

■ドライブモード専用チューニング。

パワーユニットのパフォーマンスアップに対応し、エンジンやトランスミッション、ステアリング、サスペンションなどを統括制御するドライブモードセレクターにもNISMOは専用チューニングを施している。走行シーンに合わせて選択可能なドライブモード設定のうち、STANDARDモードとSPORTモードに、増大したエンジントルクを活かした加速の伸びと余裕を得られる専用の特性を採用。加えてSPORTモードはNISMO専用シフトスケジュールを採用し、ワインディング走行時の加速レスポンスの良い走りを実現。グランドツーリングとしてのゆとりの走りと、パフォーマンスセダンならではの爽快な走りを両立している。
※SPORTとSPORT＋モードのエンジン・トランスミッションの特性は同一となります。

限界性能を極めることで得られる懐の深さがもたらす安心感が、あらゆる路面・シーンでの愉しさと心地よさを生み出す。

■高い限界性能と優れたコントロール性を追求した専用開発のハイグリップタイヤ。

エンジンのチューニングに対応して、リヤタイヤのサイズを245/40RF19から265/35R19へ20mmワイド化したNISMO専用開発のDUNLOP SP SPORT MAXX GT 600を採用。フロントとリヤタイヤで異なる扁平率として、前後のバランスを取るためトレッドパターンもフロント、リヤそれぞれ専用パターンとしている。さらに、開発ドライバーの限界評価によりコンパウンドと内部構造をチューニングすることで剛性としなやかさを両立。一部素材の最適化により軽量化も実現した。

■ワイドリム化された専用19インチアルミホイールが操舵時のレスポンスを向上。

フロント 19×9J、リヤ 19×9.5J のNISMO専用エンケイ製19インチアルミホイールを採用。デザイン面は、スポーク面を最初に冷却、凝固させ、金属組織を微細化して強度を高める、エンケイ独自の「タービル鋳造システム」を採用。リム部は、芯金に加圧しながらリムを延ばす、エンケイ独自の「MAT工法」により、金属組織内にメタルフロー(鍛流線)を作り出し、鍛造並の強度を実現。リムを薄く強くするとともに軽量化も達成した。また、鋳造ならではの造形自由度も生かした美しいデザインも生み出している。ホイールサイズをフロント+12.5mm、リヤ+25.5mmにワイド化することでホイールへの横力に対しより踏ん張りが効く剛性を確保。特に操舵初期のフロントタイヤのレスポンスを高めることで、わずかな操舵でもノーズが機敏に反応するきわめてダイレクトなハンドリングを実現している。

■高性能タイヤにあわせて最適化されたサスペンションチューニング。

タイヤのワイド化に対応し、前後のサスペンションにもチューニングを行なった。NISMO専用リヤスタビライザーを採用し、バネ定数を44％アップ。フロントサスペンションスプリングのバネ定数も4％アップしている。これによりワインディング走行時のロールを抑え安定感を向上するとともに、起伏のある路面でのピッチングを抑制し、タイヤのパフォーマンスを最大限に発揮することを可能としている。

■ブレーキパッドに耐フェード性の高いLow Steel ブレーキパッドを採用。

限界性能の向上に合わせて、4輪対向ピストンブレーキに耐フェード性が高いLow Steel ブレーキパッドを採用。スカイライン 400Rに対して温度比較で約1.5倍の耐フェード性を確保。ブレーキングを多用するダウンヒルでも、安定した制動性能を確保している。

■VDC/ABS/TCSの専用チューニングにより洗練されたコントロール性を実現。

タイヤ、サスペンション、ブレーキの性能向上に呼応して、VDC、ABS、TCSにもNISMO専用チューニングを施している。VDCは限界走行時の制御量を最適化し、車両性能をスポイルしない制御を実現。また、ABSはタイヤおよびブレーキパッドに合わせABS制御をチューニングし、100→0km/h減速時でスカイライン 400Rに対し制動距離は約4ｍ短縮している。さらに、TCSもエンジンのトルクアップに合わせて作動時間をチューニングし、より早いトルク復帰を実現。車両のパフォーマンスを活かした洗練されたコントロール性を確保している。

■車体剛性向上に貢献するNISMO専用ウインドウ高剛性接着〈フロント・リヤ〉を採用。

スカイラインNISMOはウインドウシールド接着剤をNISMO専用とし、フロント/リヤウインドウを高剛性に接着。重量増となる補剛部品を付加することなく車体剛性を向上している。GT-R NISMOで培った技術であるこの高剛性接着剤は、単品特性としては静剛性1.5倍、動剛性9倍であり、車体としての補剛効果はスカイライン 400Rに対して全体捩り剛性値が約15%向上。これにより操舵に対する応答の遅れが減少し、コーナリング時の気持ちのいいハンドリングに貢献している。

速度域が高くなるほどダウンフォースを発揮するボディは、空気抵抗の低減と、冷却性能の確保にも配慮してデザインされた。

■ダウンフォース向上と空気抵抗低減。相反する性能を両立した空力性能。

NISMO専用フロントバンパー、NISMO専用リヤバンパー、NISMO専用サイドシルプロテクターを採用。フロント/リヤバンパー下部形状、サイドシル形状、リヤスポイラー形状を最適化することにより、空気抵抗を低減しながらダウンフォースを大幅に向上。スカイライン NISMOの高速域での優れたスタビリティの実現に貢献している。

■エンジンのパワーアップに対応し冷却性能を向上。

エンジンの高性能化に対応して冷却性能も向上。フロントバンパー開口部内にエアダクトを追加し、熱交換器の中央に気流が当たるよう調整。ダクト下面に開口部を設けて気流を下方に流すことでバンパー内の圧力を制御し、スポーツ走行でも安心して走り続けられる冷却性を実現している。

走りのパフォーマンスアップに対して、スカイライン NISMOはシートにも専用チューニングを施している。

■NISMO専用チューニングRECARO製スポーツシート〈前席〉を設定。

高いクッション性、振動吸収性を維持しながらホールド性をNISMO専用にチューニングしている。座面内部の構造最適化（クッションパンのフラット化）により、体圧の分散を最適化。スエード調表皮との組み合わせでホールド性を高め、急旋回時でもシート中心部に体圧が残る優れたホールド性を実現。さらに開発ドライバーによる入念な調整を行った結果、スポーツからグランドツーリングまでカバーできるバランスを実現した。またこの仕様は軽量化も狙い、後席を一体タイプに変更。前席との合計で約20kgもの軽量化を実現している。

※NISMO専用チューニングRECARO製スポーツシート〈前席〉&カーボン製フィニッシャーはセットでNMC扱いオプション。運転席のスライド、リクライニング、助手席のスライド、リクライニングはマニュアル操作となります。